取扱説明書1(室外)
町に住む、階段を愉しむ
空へ延びていく高い建物は後にも先にも沢山できるから、ここには、なるべく地面から離れず低い集合住宅を建てようとなりました。面積を確保しつつ、敷地の形状、各法律、採光、通風を考慮していく内に、中庭を囲んだ4棟が出来ました。そこに光が差すように、南側は空に開く段丘状のカタチになりました。そこを皆が登っていけるように階段が掛けられると、このカタチからステア(=階段)ハウスという名前になりました。エレベーターはありますが、運動不足解消に、また気分転換に、階段をご利用ください。段丘上に出来た少し広い共用部「ヒナダン」は、住人の方であれば誰でも用いることができます。騒音等ご注意いただいた上で、最大限に愉しんで頂きたい屋外空間です。
賃貸の住戸は全部で38戸。細かな違いを含めると30戸は、それぞれ何か異なっています。一人の入居者にとっては、結果的には一つの住戸しか味わうことができませんが、他は自分とは同じではないという、想像の余地と隣り合わせます。よくよく考えてみると、町に住まうというのは、そういうものであったように思います。階段~共用廊下~住戸の窓配置に至り、死角のない関係が所々にあります。同じ屋根の元で集まって住まう、ということであれば、誰が住んでいるか判らない、といった匿名性よりも、僅かに気配を交換し合う住まいの方が、より安心ではないでしょうか。
取扱説明書2(室内)
外から断熱して、
内から深呼吸する
この室の内装は、湿度(しつど)変化の激しい日本の気候を配慮して設計されました。壁・天井は田川で産した石灰(いしばい)漆喰仕上げ2~3mm厚、床はタモ、もしくはアジアンウォールナット系の20mm厚+自然オイル仕上げとなっております。それぞれの厚みが一日の、あるいは季節の変化に伴う湿度変化に対応して小さな調湿機能(保湿・保温・放湿)を発揮します。
漆喰(=石灰)は柔らかい雰囲気を与え、完全無害であるだけでなく、アンモニアやホルムアルデヒド等の有害物質(VOC)を吸着する効果が認められています。従来の賃貸物件にはない自然な心地よさを大事にしています。
さらには、通常は、コンクリートの室内側で断熱するところを、その外側から断熱し、自らのエアコンの冷暖熱、もしくは太陽熱を、コンクリートに蓄えます。日中、起床中に獲得した快適な温度を、なるべくエアコンに頼らずに、就寝時間まで持ち越して、夜を過ごせることを試してみてください。
お手入れの仕方
これらの床、壁に施された自然素材は、上記のような恩恵はあるものの、通常の賃貸住宅にあるようなビニールの壁紙・合成樹脂塗料で造膜されたベニヤの床と違い、液体が浸透し、汚れが蓄積しやすいものです。そのままにしておくと拭き取りにくくなりがちです。例えばコーヒーなどの色物の液体が付着した場合は、なるべく早めに拭き取ってください。(ソファー等に付着した場合と同じとお考え下さい。)それでも汚れが落ちない場合は、市販のサンドペーパー(木部=100番/漆喰=240番ぐらい)で表面を研磨するようにして、削り落とすことができます。
懐かしさと新しさ
その他、木製建具、畳、御簾戸、杉の天板、など、かつての日本家屋にあったような、懐かしい素材や要素が、現代工法の中にちりばめられています。それらはどれも、現代主流のノンクレーム建材の類いに対して、比較的デリケートに出来ております。少しだけ優しく扱っていただけると、気持ちよくお使い続けられると思います。
お手入れの上で、なにか不具合や疑問点などがありましたら、下記までご連絡下されば、対応させていただきます。
→お問い合わせページへ
取扱説明書3(愉しみ方)
共有部分の使い方を募集中
ステアハウスは、これまでの通例に倣った「賃貸物件」にはない住空間の豊かさを目指そうと、オーナー様と構想を練って参りました。その結果の大きな部分が、中庭と南側の段丘上の共用部分です。段々畑状の各広場を「ヒナダン」と呼んでいます。ここをどのように用いるか、入居者の方と共に作り上げていけないだろうかと思っています。又、地上の中庭は、この敷地の履歴上、第三者が通り抜けることもあるかもしれません。が、それ以前に、入居者の方になにか愉しんでいただくことはできないだろうか、と思っています。
このような、普通の賃貸にはないちょっとした空間を、積極的に用いてもらうために、入居者の方々と運営者、また入居者同士の連絡網があるといいのでは、と思い、各室にインスタグラムのアカウントを作りました。
@stairhouse_■■■■
※■■■■の部分には各部屋番号が入ります
御本人のアカウントではなく、部屋番号に匿名化したアカウントです。
また、各室のアカウントを用いて、ご自分の生活の室礼(しつらえ)を自由に投稿していただけないでしょうか。入退去の前後に、投稿し、原状回復の確認に用いることもできます。このような室内のビジュアルが、その室単位で、履歴として蓄積されるなら、その積み重ねが室の小史となり次の入居者へ引き継がれます。投稿に対するお礼も現在検討中です。
この住宅はこのようにして、「誰が住んでいるかわからない」という現代的な集住の問題を乗り越えようとしています。
もちろん、共生のための仕組みであっても、強制ではありません。
入居時にお渡しした「各部屋インスタアカウントについて」という文章に部屋のインスタグラムアカウントとパスワードを掲載しております。これらアカウントの運営、管理は、「漆喰と木の室」により行われます。各室アカウントの営みに不適切と弊社が判断する内容の投稿や連絡があった場合は、当該投稿の削除、もしくはアカウントの停止等せねばならないことも、あらかじめご了承お願いいたします。